「殺さないよ」から始まる君たちへの懺悔

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「殺さないよ」
 と僕は言った。
「殺さないの?」
 と君は問うた。
 多分、いつか君は死ぬのだろうけど、死んでしまうだろうけれど、けれどそれは今じゃない。
「殺す理由がないし、殺したくないからさ」
 と僕は答えた。
 しかし、生き続けることは、君の幸せなのだろうか、と僕は思った。君はネズミのなかでもとくに大人しく、従順で、今もこうして実験台の上で遠くを見つめている。
「殺せばいいのに」
 とネズミは言った。
「嫌だ」
 と僕は答えた。
 するとネズミはきゅるんとした瞳で僕を一瞬見つめ返し、安心したように瞼を閉じた。
「君を殺せば実験は失敗で、それは直接、僕の失敗だ」
 そんなことになれば、人生の転落は目に見えている。それは嫌だという、これは僕のエゴだ。
「だから君には生き続けてもらうよ、わがままな僕でごめんね」
 小さく頭を下げると、僕は君の薄い皮膚に薬液を投与した。
公開:26/02/04 11:14
更新:26/02/04 11:21

さがやま なつき( 鹿児島 )

2021年7月初投稿。お話の主人公は男性(もしくは少年)が多め。女性はキャラ作りが苦手です。(口調が書けない)

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