囁きの中

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 絶壁があった。頭を振り、手を伸ばして指で触れる。少しなぞり、掌を開けた。そっと押し当て、見上げる。息を一つ吐き、背を向けた。

 視界に映る岩肌。

 もたれかかり、擦れるままに座り込む。生地が裂ける音がした。脚を辿り、爪先を見つめる。隙間から降りて来る熱が照らしていた。

 額を拭うと、袖が黒く滲む。
 
 逸れていく光。
 闇を拡げて。

 岩壁に。
 土へ。

 ──己。

 等しく塗り潰された。
 瞼を閉じ、俯く。

 僅かな振動が。

 空気を伝い、鼓膜に届いた。
 遠くから。
 近くからも。

 音に沈み。

 ────囁きへ還る。
SF
公開:26/07/27 21:00
創作 詩的掌編 循環 境界

shige5964

哲学的な掌編を書いています。基本Show Dont Tellです。文章にAIを一切使用していません。画像はAIです。ブログに作品を置いてますので、ご興味があればこちらも是非。
https://baseman0406.blogspot.com/?m=1

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