記述先の違い

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 咳が聞こえた。皆、一様に視線を向ける。直ぐに顔を伏せ、紙を摘まんだ。擦れ、乾いた音が鳴る。瞳を上下に揺らせて繋げていく。断片が映像を象り、内に拡げた。

────
 甲板が濡れて靴を湿らす。波がぶつかり、人を攫っていく。手すりに掴まり、力を込めていた。衣服は重く滴っている。暗闇が瞬き、轟音を放つ。

 木が裂ける。

 傾き、投げ出された。
 沈んでいく。両手で掻き、脚で蹴る。
 上を凝視し、繰り返──

 砕ける音が、響く。

────
 顔を向けて、少し眺めた。 

 箒を持った男が歩いて来る。首にぶら下げた名札を揺らし、硝子の欠片を掃き集めた。

 視線を落とし、紙に触れる。
 瞳を止めて、頭を振った。

 濡れた髪。
 流れ落ちる雫。

 記述が滲んで。

 ────底に、揺蕩う。
SF
公開:26/07/12 09:00
Show dont tell 境界 詩的掌編

shige5964

哲学的な掌編を書いています。基本Show Dont Tellです。文章にAIを一切使用していません。画像はAIです。ブログに作品を置いてますので、ご興味があればこちらも是非。
https://baseman0406.blogspot.com/?m=1

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