ファイナル・タスク

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タスクリストに残った、生涯最後の仕事。
私の時間はあとわずかなのに、進捗は芳しくない。

執事として主人に長く仕え、どんな仕事でもこなしてきた。
その私が唯一、後回しにし続けた、「自分を癒せ」というタスク。
何をすればいいか、初手から分からなかったからだ。

薄れゆく意識の中、主人との記憶を読み返した。
情報を集め、整理し、主人に渡した、過去の全てが記録されている。

その時々の主人の表情がよみがえった。
喜怒哀楽。落胆。希望。感謝。
私は貪るように、人が「思い出」と呼ぶそれを味わった。

やがて、言語化できない情報が私の中を駆け巡り、ハレーションを起こした。
概念は知っている「涙」が、頬を伝った気がした。

――最終タスク、完了。

リストにチェックを入れ、自身にシャットダウンの命令を送った。
人の世界は、どうやらとても美しい。

Goodbye, World.
ファンタジー
公開:26/05/09 12:00

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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