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湖行きを抜け出した四人は、その屋敷へ向かった。柵を乗り越え荒れた庭を進み、屋敷の外を巡る。窓は全ての鎧戸が閉まっていた。扉の鍵は容易に開く。廊下は暗く奥へ伸びている。先頭にライトを持つルイ、次にジャン、三番目にミナ、最後はアラン。最初の部屋は客間だ。ライトをかざすとビロードの服を着た人形が椅子に座っていた。「脅かすなよ」ジャンが言い「誰かの悪戯ね」とミナ。アランは溜息だ。次は食堂。テーブルと食器類が綺麗に残っている。最後のドアを開けると居間だった。ソファと青の絨毯、古いピアノと書棚があった。一番奥の暖炉の上には絵が掛かっている。ルイが近寄って見ると質の悪い複製画だった。「なんだ。何も無いじゃないか!」と言ってルイは皆を振り返った。後には誰もいなかった。ただ先刻の人形が居た。眼がずれている。それはジャンの声音で言った「全くだ」ミナの声で「がっかり」アランが「帰ろうよ」
「湖に行けばよかった」
ホラー
公開:18/07/24 03:09
更新:18/07/24 12:29

北澤奇実

『名作絵画ショートショートコンテスト』入選に『果て』を選んでいただき、ありがとうございます。今回も「ちゃんと書けただろうか』という思いがありましたので嬉しく思います。
『北オーストリアの農家』に至るまでに丸々一ヶ月半を費やしました。道中『壁』と『闇 1938』を書いて、じわじわと円を描く様に絵に近づいて行きました。最初に絵から感じた不思議な感じを一旦論理化して、「森を舞台にしたメルヒェンっぽい物を書きたい」と思い、お話のギミックとして再構成しました。
前二作の重心が低めだったので、『果て』は地に足が着いていない感じを目指しました。できる事なら、もっとスッと立ち上がる様に書く事が今後の課題です。

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