三番目

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 僕が三男だと言うと、誰もが気の毒そうな表情になる。
 両親はその度、長男は事故死で、次男は感染症で命を落としたのだと言い訳紛いの説明を繰り返す。
 そうなのね、と納得する人もいれば、そのまま距離を置く人も居る。
 ただ、みんなして、「もう後がないから。しっかりね」と、励ましとも脅しともつかない言に口を揃えるのだ。
 今の世に、一人っ子は存在しない。全員が、四人兄妹あるい姉妹だ。
 受精卵が四つに分裂した段階で、一つをそのまま着床させ、残りはそのスペアになる。
 事故や病気で長子が命を落とせば、次の胚が成長を許される……こんなに早く、三人目まで使う羽目に陥るのは稀で、僕の肉体年齢は六つだが、兄たちの戸籍を引き継いで、書類上は十五歳だ。
 両親は僕達を同じ名で呼ぶ。僕に何かあったら、次の弟も、そう呼ばれることになるだろう名で、母が僕を呼んでいる。四十二歳の父と同い年で、今年十六歳になる母が。
SF
公開:18/07/05 08:58
更新:18/07/05 09:45

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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