門柱

　とある金持ちが、沖縄に別荘を建てることにした。
　伝統的な琉球建築を基準に、東京から派遣した新進気鋭のデザイナーに設計を任せた。
　台風被害を少なくするため、家屋を低く構える代わりに敷地を広く取り、幾つかの棟に分けて宿泊に対応する形に小さな村のような様相が目新しく、金持ちは設計図に大いに満足し着工を指示した。
　金持ちが唯一出した希望は、門柱にシーサーを配すること。
　大理石から切り出した彫刻に金箔を貼れば、金運も上がるに違いないとご満悦だった。
　別荘が完成したとの報に、金持ちは友人知人に招待状を出し、一足先に現地に入った。
　新築祝いのパーティーの準備に派遣された使用人達が、恭しく出迎える……背後には、トゥニカとトガを身に付けた掘りの深い偉丈夫、ガイウス・ユリウス・カエサルが右手で緩く天を指さす彫像が、門柱代わりにそびえ立っていた。
　金持ちは思わず叫んだ。
「シーザーやないかい！」