痩せる夢

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 食べ過ぎです。痩せなさい。
 祖母から手紙と共に、夢が一つ送られてきた。黒と茶色のマーブル模様で美味しくなさそう……カカオ99%のチョコだと思えばいいかと、えいやと口に放り込む。
 お茶会の夢だった。
 ケーキにスコーン、ジャムとたっぷりの生クリーム、クラッカーには赤と緑のアンゼリカを乗せ、口直しにピリリとマスタードの効いたキュウリのサンドイッチの乗ったテーブルを私と囲むのは四人の女の子。
 所狭しと並ぶ料理に次々と手を伸ばし、彼女たちは甲高い声で言い合っている。
「こんな食べてるのにィ、アタシ達って太らないのよ何故かァ!」
「ホントよ、何故かァ!」
 太る筈はない。裂けた口の端から食べたものが溢れてるし、胸の空洞からもぼとぼと落ちてるし、紅茶は首筋の穴からぴゅーぴゅー流れてる。
 ゾンビのお茶会なんて、悪夢が過ぎる。
 貘が食べた夢は、叶うようになっている……現実に、即している限りは。
ホラー
公開:18/06/27 17:00
更新:18/06/25 10:11

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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