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「味見!」
ストローをパクリと咥えて、オレンジ色の液体を吸い込んで。
「ごちそうさま!」
君はグラウンドの向こうに走って行ったのに、ジュースの残りを飲めないで居る。
ただ一口。たった一口、君の唇が触れただけで、テイクアウトのMサイズ、ドリンクバーと味の区別もつかない果汁百パーセントのジュースが、まるで君そのものになったようで、掌に包むだけでやっとだ。
触れて、いいだろうか。飲んでも、構わないだろうか。
掌の上でちょこんと女の子座りに見上げてくる、君の幻を見守る。
氷が溶けて薄くなっちゃう。
暑いから結露してきちゃった。
小さな君の訴えに、震える手と唇でなんとかストローを口に運ぼうとしたその時。
横から無慈悲な手が伸びてカップの縁から直接ジュースを呷った上に、ぼりぼりと氷をかみ砕く。
「一口もらったぞ湯川」
「高橋ぁ!」
湯川の渾身のアッパーカットが、高橋の顎に炸裂した。
ストローをパクリと咥えて、オレンジ色の液体を吸い込んで。
「ごちそうさま!」
君はグラウンドの向こうに走って行ったのに、ジュースの残りを飲めないで居る。
ただ一口。たった一口、君の唇が触れただけで、テイクアウトのMサイズ、ドリンクバーと味の区別もつかない果汁百パーセントのジュースが、まるで君そのものになったようで、掌に包むだけでやっとだ。
触れて、いいだろうか。飲んでも、構わないだろうか。
掌の上でちょこんと女の子座りに見上げてくる、君の幻を見守る。
氷が溶けて薄くなっちゃう。
暑いから結露してきちゃった。
小さな君の訴えに、震える手と唇でなんとかストローを口に運ぼうとしたその時。
横から無慈悲な手が伸びてカップの縁から直接ジュースを呷った上に、ぼりぼりと氷をかみ砕く。
「一口もらったぞ湯川」
「高橋ぁ!」
湯川の渾身のアッパーカットが、高橋の顎に炸裂した。
青春
公開:18/06/22 17:00
幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。
プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。
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