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これは私が、まだ若かった頃のお話だ。
「宵待ちはいらんかね?」
花売りは私に、一輪の月見草を渡してこういった。
「ひとつ、今宵の夢をごろうじろう。」
薄紅色の儚げな花びらが、
風に揺られてひらりと舞った。
一陣の突風後、
辺りは突如、黄色い待宵草の花畑に成り替わる。
白い月が煌々と照らす原野に、
後ろ向きに立っている女性がいた。
その後ろ姿を見ると私は、
胸をぎゅっと締め付けられるが、記憶にない。
声をかけあぐねていると、
女性は振り返り、寂しそうに微笑んだ。
私はドキリとして、思わず声が漏れ出した。
「ああ、かあさん…」
ざざぁと黄色い花が渦を巻き、
二人を巻き込むその刹那、
女性はドンっと私を突き飛ばした。
気が付けば、
月見草を手に、ぽかんとそこに立っていたんだ。
だから、坊や。気を付けるんだよ。
宵の月は、心を囚える。
宵に捕まり、宵を掴み続けぬように。
「宵待ちはいらんかね?」
花売りは私に、一輪の月見草を渡してこういった。
「ひとつ、今宵の夢をごろうじろう。」
薄紅色の儚げな花びらが、
風に揺られてひらりと舞った。
一陣の突風後、
辺りは突如、黄色い待宵草の花畑に成り替わる。
白い月が煌々と照らす原野に、
後ろ向きに立っている女性がいた。
その後ろ姿を見ると私は、
胸をぎゅっと締め付けられるが、記憶にない。
声をかけあぐねていると、
女性は振り返り、寂しそうに微笑んだ。
私はドキリとして、思わず声が漏れ出した。
「ああ、かあさん…」
ざざぁと黄色い花が渦を巻き、
二人を巻き込むその刹那、
女性はドンっと私を突き飛ばした。
気が付けば、
月見草を手に、ぽかんとそこに立っていたんだ。
だから、坊や。気を付けるんだよ。
宵の月は、心を囚える。
宵に捕まり、宵を掴み続けぬように。
ホラー
公開:18/08/31 20:09
目を留めていただいて、ありがとうございます(^^)
さぁさ! もの語りをはじめよう
400文字の小箱の奥に
ぎゅっと詰まった言の葉と
明けた途端にポンと広がり
はらり舞い散るヒトハシのムゲン
垣間見えるは神か悪魔か
ひと筆つづりて 心留め置き
今日も今日とて 世界を創る
さぁさ! もの語りが始まるよ!
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