0
14
音がない。風もない。
そこまでの記憶はなく、ただ、その家のある光景だけが存在している。
さまざまな色、光、匂い。
あるとき、それらが一瞬にしてぼくの世界には生まれた。
白い部屋のなか、永遠に眠り続けると思われたぼくの世界が現実に繋がった日、その瞬間、その家の記憶も生まれた。ぼくを囲む白衣の人や年老いた男女たちが涙を流しているのをぼんやりとながめながら、ぼくは家の記憶をたどっていた。
せっかく生れ落ちたぼくの世界は部屋の中だけだった。
しかたない。ぼくは唯一頭の中にあるその家を、白紙の紙に写し取る。
その絵を見た白衣の人たちはにわかに色めきだつ。
そんなはずはない。みえるはずはない。
そこには、一度も見たことがないはずの、彼の住む家が正確に描かれていた。
音がない。風もない。
そこまでの記憶はなく、ただ、彼の住む家だけが世界に存在している。
そこまでの記憶はなく、ただ、その家のある光景だけが存在している。
さまざまな色、光、匂い。
あるとき、それらが一瞬にしてぼくの世界には生まれた。
白い部屋のなか、永遠に眠り続けると思われたぼくの世界が現実に繋がった日、その瞬間、その家の記憶も生まれた。ぼくを囲む白衣の人や年老いた男女たちが涙を流しているのをぼんやりとながめながら、ぼくは家の記憶をたどっていた。
せっかく生れ落ちたぼくの世界は部屋の中だけだった。
しかたない。ぼくは唯一頭の中にあるその家を、白紙の紙に写し取る。
その絵を見た白衣の人たちはにわかに色めきだつ。
そんなはずはない。みえるはずはない。
そこには、一度も見たことがないはずの、彼の住む家が正確に描かれていた。
音がない。風もない。
そこまでの記憶はなく、ただ、彼の住む家だけが世界に存在している。
その他
公開:18/08/30 23:03
作家の本間祐さんが提唱した500文字小説である「超短編」というムーブメントに共感し、15年以上に渡り「超短編」を意識して短いお話を書き綴っております(ショートショートとはやや手触りが違いますが、同じくらいのサイズの小説なのでよろしくおねがいします)。なお、秋と春に文学フリマ東京に「超短編マッチ箱」で出展し、小冊子を販売しています。
そのほか「てのひら怪談」などにも参加しておりました。俳句もやってます。結社「蒼海」会員(俳号:幽樂坊)。
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます