点描兵器

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 戦火に追われ、かつて絵描きだった兵士は深い森のなかに逃げ込む。
 麓の街が燃えているのがわかる。炎から逃げなければならない。
 やみくもに走り続けると、突然、開けた場所に出る。
 木々に覆われた傾いた小屋があった。まるでどこかでみた絵画のように色や形が奇妙に屈折している。

 言い知れぬ安らぎを感じて、兵士が小屋に近寄ろうとしたその瞬間、小屋は無数の点となって飛び散った。
 全身に点描を浴び、穴だらけになって、兵士は力尽きる。

 小屋のある光景は、元の通りの奇妙な色と光に戻っている。
 少しだけ、書き足されていた。
その他
公開:18/08/28 22:26
更新:18/08/28 22:33

松本楽志

作家の本間祐さんが提唱した500文字小説である「超短編」というムーブメントに共感し、15年以上に渡り「超短編」を意識して短いお話を書き綴っております(ショートショートとはやや手触りが違いますが、同じくらいのサイズの小説なのでよろしくおねがいします)。なお、秋と春に文学フリマ東京に「超短編マッチ箱」で出展し、小冊子を販売しています。

そのほか「てのひら怪談」などにも参加しておりました。俳句もやってます。結社「蒼海」会員(俳号:幽樂坊)。

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