すれ違う 〜 明治神宮前

私と彼の小さな約束
毎朝通る地下鉄の
人混み流れる乗り換え通路

足早に過ぎる人混みの中
お互いそっと
手を触れ合わせる

彼との出会いは高2の春
中坊の面影残る年下くんは
今時、珍しい坊主頭

耳まで真っ赤になりながら
一目惚れだと手を掴まれた

呆気にとられて振り返ると
お猿さんみたいにくしゃくしゃで
私の方は破顔一笑

そのぶっきらぼうさが可愛くて
付き合い出した8年前

気づけば、お互い社会人
すれ違いが続く中
その一瞬が二人を繋ぐ


少し早めの起床時間
ボサボサの髪を整えて

通勤経路の交差する
人混み流れる接続駅

お互い路線の乗り換えで
すれ違う刹那、その一瞬

向こうから
優しい瞳が近づいて来る
流れるままに彼が手を出す
私もそっと それに合わせる

もう何度
この手を確かめただろう
あと何度
この手に触れられるのだろう

この幸せを掴みながら
日常の中に消えていくのだ