守護象

2
77

 海外旅行のお土産に、商売の神様だという象の置物を貰った。
 ヨーロッパに行って何故南アジア。不思議に思えば、骨董品ののみの市で安かったそうだ……確かに、塗装の金も朱も褪せたり剥げたりでみずぼらしいが、細部に残る青や緑の名残に、嘗ては絢爛とした品だったことを彷彿とさせた。
 ちなみに私は小さなうどん屋を営んでいる。商売繁盛になるならと、福助、招き猫に象を並べたら、妙に多国籍な空間になった。
 そして、その日からカレーうどんがよく出る。時には売り切れになる程だ。
 私は辛いものが苦手なので、味見をしてもよく解らないのだが、後味に得も言われぬ辛さと香味が混じってたまらないらしい。
 あの象の御利益か。まさかと疑いついでに、一晩カレーを寝かせる間に不思議でも起きているのではと、こっそりカメラを仕掛けた、そこには。
 本来、七味入れである招き猫が、必死に頭を振って中の薬味を投入している姿があった。
ファンタジー
公開:18/06/20 17:00

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容