尾根ギア

52
235

まさかこんなところで「尾根ギア」に出くわすとは思わなかった。尾根ギアは一般にはブロッケン現象のようなものだと考えられており、行方不明になった20世紀のイギリスの登山家が見たのが最後と言われている。
尾根ギアは大小様々な黒光りする歯車で構成され、ナイフの様な稜線に沿って遥かな峰々に続いていた。僕は好奇心に駆られて一つの歯車を回してみた。すると大きな歯車の小さな動きは、小さな歯車の大きな動きに伝えられ、尾根ギアは音を立て回転を始めた。
そして歯車の間から、無数のオナガを投げい出した。オナガは警戒声を立てた。
ガチャガチャボンボンギュエーギュエーガチャガチャボンボンギュエーギュエー。
うるさい。こんな場所には、もお長居できない。何とかしてくだしあ!お願いします!!
すると稜線の右側から巨大な空白が現れ全てを消滅させて、そのまま勢い余って僕まで消し去った。
あとには恐ろしい程の虚無感だけが残った。
その他
公開:18/06/17 23:51
更新:18/08/17 11:55
地図はUSGSのサイトより

北澤奇実

前回の投稿から一年近く経っていました。びっくりしました。
そしてSSGに初投稿からそろそろ6年です。自分の変わらなさに、改めてびっくりしました。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容