メガネが先か

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「次、高橋」
「はい、先生」
 明瞭な返答で、音読を引き継いだのは、湯川だった。
「……お前は高橋じゃない」
「よく見て下さい先生。俺が高橋です」
 顔に載せた眼鏡の存在を主張し、くい、くいと指で動かす。
 メガネ男子の誉れも高い、当の高橋は眼鏡を取り上げられ、張り付くように教科書を見ている。
「いじめか」
「ちがいます、純然たる存在意義の主張です! 眼鏡が高橋なのか、高橋が眼鏡なのか、個としてのいどおろぐ舌かんだっ」
「イデオロギーの証明としての、これは崇高なる心理実験なのです」
 高橋が台詞を受け継いで、すらすらと続ける……よく解らない遊びを始めたのだけは理解した。
「よし解った。取り敢えず、お前等、眼鏡とイデオロギーをテーマにレポート提出」
「横暴すぎるっ!」
 ぶーぶーと文句を言うコンビを、見比べているうちに、ふと自信がなくなる。
 今眼鏡をかけているのは……どっちだっただろうか。
青春
公開:18/06/18 17:00
更新:18/06/18 06:39

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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