友人席

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 式場を埋める友人が足りない。
 新婦側に合わせたいところだが、友人はネットの向こう、オンラインゲームのメンバーばかりで北から南、広範囲に居住する彼等を気軽に呼び寄せられない。そんな相談をメンバーに漏らせば、なんとかしてやる、まかせろと言う。
 式の当日。
 剣と魔法の世界そのままの姿のメンバー達が現れた。騎士や僧侶、魔法使い。余興の衣装ですと、プロジェクションマッピングを駆使した寸劇に式を盛り上げ、嫁さんにもすごいお友達ねと言われて鼻が高い。
 そして親戚、友人を見送った後、式場の片隅の彼等に声をかける時間が出来た。
 感謝を告げても、誰一人、言葉を返さない動かない。
 おい、と騎士の肩を叩けばぐにゃりと歪んで、何か知れない塊になって崩れた。
「ごめーん、電気刺激で動かしてる蒟蒻だから電池切れて劣化」
 ぐにゃぐにゃした塊に残った唇で言った僧侶も、小さく泡を吹いてそれきり動かなくなった。
SF
公開:18/06/10 17:00
更新:18/06/09 06:54

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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