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梅雨の季節から、クリーニング稼業は大忙しだ。
毎日毎日。仕上がる以上に依頼が舞い込み家族総出のてんてこまい。やれ、車の泥跳ねにやられた、水たまりに落ちた、兄弟に踏まれて足形がついた、手こずる汚れの引っ付いた服がひっきりなしにやってくる。
最近は大手のクリーニング工場に作業を任せ、品の遣り取りだけ店頭で済ませるチェーン店も多くなったが、うちは昔ながらに人の手で仕上げる丁寧さを売りにしている。
一着一着から、着る者の体格、生地、癖をよみとって、皺になりやすい腰の部分に重点的に糊を効かせたり、襟汚れに悩む向きには目立つところに少しだけ蝋を施してみたり。ほつれに手を入れ、すり切れた所に補強を入れるのは、ちょっとしたサービスだ。
そうこうしてる間に、シーズン最後の客が引き取りにやってきた。
父母兄妹、揃いの燕尾服に袖を通したツバメの一家が北に飛び立って、我が家は毎年夏の深さに気付くのだ。
毎日毎日。仕上がる以上に依頼が舞い込み家族総出のてんてこまい。やれ、車の泥跳ねにやられた、水たまりに落ちた、兄弟に踏まれて足形がついた、手こずる汚れの引っ付いた服がひっきりなしにやってくる。
最近は大手のクリーニング工場に作業を任せ、品の遣り取りだけ店頭で済ませるチェーン店も多くなったが、うちは昔ながらに人の手で仕上げる丁寧さを売りにしている。
一着一着から、着る者の体格、生地、癖をよみとって、皺になりやすい腰の部分に重点的に糊を効かせたり、襟汚れに悩む向きには目立つところに少しだけ蝋を施してみたり。ほつれに手を入れ、すり切れた所に補強を入れるのは、ちょっとしたサービスだ。
そうこうしてる間に、シーズン最後の客が引き取りにやってきた。
父母兄妹、揃いの燕尾服に袖を通したツバメの一家が北に飛び立って、我が家は毎年夏の深さに気付くのだ。
ファンタジー
公開:18/06/07 17:00
更新:18/06/08 08:21
更新:18/06/08 08:21
幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。
プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。
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