ラッキースター

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 短冊に書くことに困って、世界平和を願った経験はないだろうか。
 人の目に触れると思えば、正直な心情など書ける筈もなく、さりとて百億円ほしいとか、冗談にしても品がない。いや、ほしいけど。
 七月七日、商店街で買ったキュウリについてきた短冊を前に、別の意味で途方に暮れる。
 細い。そして長い。
 大笹の前で、使い方を教えてくれると言うので、足を向ける。
 長テーブルの前には子供が群がり、先日開店したばかりのパン屋のお兄さんが居た。
 会釈でどうぞと促されて近付くと、彼の前にはぷっくりと膨らんだ紙製の星が積まれている。
「それで作るんですよ」
 紙の端を折って作った五角形に、長い辺をくるりくるりと巻き付けて端を折り込み、指先で形を整えれば可愛い星になった。
「これなら秘密の願い事も見えないし」
 ね、と笑った片頬にえくぼが出来て、初めて書きたい願いが見つかった。
 お兄さんの、名前が知りたい。
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公開:18/06/03 17:00
更新:18/06/01 06:26

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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