目的地は

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「ねぇ、あれ、海、海、海?」
 ナビは海までは、もう少しあると告げているが、子どもらはその海を捉えたらしい。
「さあ、どうかな? でも、あともう少しで着くからな」
「やったー!」
「パパ、浮き輪に空気入れてもいい?」
「運転の邪魔だけはするなよ」
 返事の代わりに、後部座席からカラフルな浮き輪が現れてくる。
「おや、新しいバイパスができたんだ」
 このまま進むと道幅が狭く、うねうね道が続いてしまう。ハンドルを切り、新しい道へと進む。
 やがて、視線の先に大きな水平線が見え、開き放たれた窓から、潮の香りが流れ込んできた。
 もうすぐ目的地だ。だが、どこからこの道から降りればいい。ナビは道なき道を示している。そのうえ、道はいつしか片側一車線になっている。
 妻がスマホで現在地を確認した。その途端、妻が青い顔をした。
 現在地は、海の上を指し示している。
 

 
その他
公開:18/05/30 14:58

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


Twitter @yoko_egaku
note @yokomare

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