幽霊船

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呪われた海域。往けば還れぬ沖へ太助の船は向かう。海鳴りが次第に声の姿となった。柄杓をよこせぇ。水面から死者の腕が昇ると太助は震える手で柄杓を渡した。もっとよこせぇ。押し寄せる無数の腕に応じる。柄杓を得た腕は巨大に膨れて船を囲みそそり立った。最早空が見えない。腕は一斉に海中に沈むと再び伸び上がり、柄杓から船へ大瀑布の様に海水を注ぎ始めた。絶叫をこらえ太助は船橋に命じた「今だ」。
彼の乗るタンカーの甲板と船底が爆散し、内部から直径百米に及ぶ水車がせり上がり固定された。船は「水車を内に挟む底の抜けた柄杓」となった。両舷に空気タンクを持ち沈む事は無い。巨腕は尚も水を注ぎ、それを受けて水車が回りだした。<こちら船橋、水車は目標回転数に到達>「送電開始」<送電を確認。成功です!>歓声が湧いた。
舟幽霊の水を汲み上げる力による洋上発電システム。後にそこは「祝福の海域」と呼ばれ多くの『幽霊船』が並んだ。
ホラー
公開:18/05/29 02:21
更新:18/05/29 12:20

北澤奇実

猫ショートショートコンテスト、優秀賞を頂戴しました。ありがとうございました。久しぶりの受賞でしたのと、紙の雑誌に掲載されるという事で喜びもひとしおです。
猫は自分では色々と書いてきたつもりなので、新しい猫のネタを考えるのに苦労しましたが、なんとなく自分らしくできたのではないかと思います。
今後とも精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。

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