あなたは、私の

　オレンジの片割れ。スペインの諺。
　半分の果実が、ぴったり合わさるのは世界に唯一、もう半分だけ。生涯たった一人の恋人、なんて意味があるらしい。
　知った時は、正直ステキだと思った。けど、ドラマか映画の影響で、合コンに行く度、同じ文句が飛び出して、もう飽き飽きしている。
　恋人が欲しいのにオレンジばっかり、今日で何個目？　そう、女友達と笑い合う。
　有名大学の院生が来るからと、気合を入れた今日の合コンも外れ、適当な理由で切り上げた後を、足音が追いかけて来た。
「待って下さい」
　息せききって駆けて来たのは、例の有名大学の、でもぱっとしない彼だ。
「あなたが、探してた半分だと思うんです」
　またオレンジ。冷笑しようとしたとき、彼の指が天を指した。
「あなたこそ、あの半分だ」
　空には半月。数えきれないオレンジじゃなく、世界唯一の片割れに例えられたのは初めてで、思わず、はい、と応えてしまった。