幻花(まぼろしか)

私は昔、見ただけで幸せになれる幻花を探していた
日の出る直前にしか咲かないとされていて毎朝の日課になっていた

探し始めて３年くらいが過ぎた辺りか、まだ薄暗い森の中でひとりの女性に出会う、彼女も幻花を探して１年以上経つがまだ見たことがないと言う
お互い情報交換をし捜索範囲は段々と狭められていった
もうすぐ見付けられる様な気がしていた

そして今、８０を過ぎ病床に伏している、妻が手を握りしめ何かを言っているが聴こえない…お迎えが来たようだ
結局幻花は見付けることは叶わなかったが、私にとってあのとき出会い今まで添い遂げてくれた妻が幻花だったのかも知れない…