『雨宿り』

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むかしむかしのおはなし
ある雨の夜、男が一人家で休んでいると、ほと、ほとと戸を叩く音がする。
「お願いです。少しばかり雨宿りをさせてもらえないでしょうか」
透き通るような女の声だ。
だが男は戸を開けないまま眉を潜める。
「こんな雨の夜更けに女一人、狸が化かしに来たんじゃあるめぇな」
「いいえ、狐狸の類いではございません。私は雨女なのです」
「雨女ならたかが雨など構いやしねぇだろ」
「それは真正の雨女の話。私のような半端者には雨はつめたいのです。どうか雨宿りを」
「ダメだね。怪しすぎる」
「どうか入れてくださいまし。入れてくれたら何でも致します。独り身ならばあなたの嫁にでも」
「嫁か、ううむ。ひとつ言うが俺は面食いだぜ。器量良しじゃねぇと嫁にはとらねぇ」
「心配無用にございます。私は雨女。雨に濡れて、もうびじょびじょ」
その他
公開:18/03/22 19:38

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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