アイコン

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 文明が発達しきって、人間は家から一歩も出なくてよくなった。
 単純作業は全て人型のAIがこなし、人の仕事は思考し、指示するだけ。そうなると「絆」なるものを意識しだすもので、やはり何らかの形で他者とコミュニケーションを取らねば、と焦った結果、しなくても良い通勤通学をアイコンと呼ばれる代替品を利用して行うようになった。
 初期段階では美男美女のアンドロイド。次に二次元のキャラを立体化したものが流行し、自身の最盛期(誇張込)の特注を経て、猫を使うことで落ち着いた。
 生きた猫の首筋にチップを埋め込み、電気信号で操作と会話を成立させる。
 猫は、良い。誰の地雷も踏むことがない。
 多種多様の猫が電車に乗り込み、デスクに陣取り、川べりのベンチで身を寄せ合う光景に、世界に平和が訪れたと、人類は満足しきっていた。
 が。
 脳髄のみとなった彼らは、自分たちが種として絶滅したことにまだ、気付いていない。
SF
公開:18/02/22 07:37
更新:18/02/22 11:47

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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