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 レールの上を黒電話が走っていた。
「これはいったい…」
 男は驚いたが、周りの人たちは皆、勝手知ったる様子で黒電話に乗車していた。男は乗り方がわからない。困っている男にスーツ姿の男性が声をかけてくれた。その男性に、男は聞いた。「あの、この電車にはどのように…?」
 すると男性は頬を緩め、「見ていてください」と言った。そうしてダイヤルを回した。
「ああ、母さん。今から帰るよ。うん、うん、だいじょうぶ」
 男性は喋っていた。黒電話は、まさしく電話だった。
「このように、行きたい場所の住所を回してください。では、私はこれから里帰りしますので」
 男性は去っていく。里帰りすると言っていた。この電車は、ダイヤルを回すだけでどこへでも行けるらしい。郷愁を誘う黒電話。どうせ行くなら故郷がいいが、都会育ちの男に故郷はない。羨ましいなと思いつつ、男は歩いて一人住まいのアパートに帰った。
公開:26/03/27 19:27

さがやま なつき( 鹿児島 )

2021年7月初投稿。お話の主人公は男性(もしくは少年)が多め。女性はキャラ作りが苦手です。(口調が書けない)

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