5
4
ビール缶を開けるときのプシュッという音が好きだ。嫌なことがあっても、音と一緒に飛んでいく気がする。ーーと思ったら、本当に飛んでいた。
夜風を切りながら、街の明かりを眼下に見る。怖いはずなのに、心が軽くなっていく。
「楽しんでる?」と肩のあたりで声がした。見れば金色の泡が生き物のように笑っている。
「もしかして、……ビール?」
「うん、化身みたいなもの。“プシュッ”を愛してくれる人のそばに出てこれるの。今日はごちそうを食べる日」
そしてナゾの化身は、空から小さな泡をばらまいた。
駅前、公園、商店街。泡が弾けるたびに、誰かの表情がやわらぎ、笑い声が重なる。空気まで明るくなる。
「わたしたちには、笑顔がいちばんのごちそうなの」
次の瞬間、足元が定まって、気づけば自分の部屋だ。手の中の缶はまだ冷たい。ぜんぶ夢だった気がする。けれども一口飲んだビールは、冷たいのに、不思議とあたたかい味がした。
夜風を切りながら、街の明かりを眼下に見る。怖いはずなのに、心が軽くなっていく。
「楽しんでる?」と肩のあたりで声がした。見れば金色の泡が生き物のように笑っている。
「もしかして、……ビール?」
「うん、化身みたいなもの。“プシュッ”を愛してくれる人のそばに出てこれるの。今日はごちそうを食べる日」
そしてナゾの化身は、空から小さな泡をばらまいた。
駅前、公園、商店街。泡が弾けるたびに、誰かの表情がやわらぎ、笑い声が重なる。空気まで明るくなる。
「わたしたちには、笑顔がいちばんのごちそうなの」
次の瞬間、足元が定まって、気づけば自分の部屋だ。手の中の缶はまだ冷たい。ぜんぶ夢だった気がする。けれども一口飲んだビールは、冷たいのに、不思議とあたたかい味がした。
ファンタジー
公開:25/11/09 00:08
更新:25/11/09 16:30
更新:25/11/09 16:30
ご覧くださってありがとうございます。
学生時代、文芸部に所属して短いお話を書いていました。あれからウン十年、仕事、家事育児に追われて自由な創作から離れていましたが、心のリハビリ(ストレッチ?)のために登録。
//日々の生活が追ってくるため、ログインが不定期になります。
ログインするとコメントを投稿できます
藍見サトナリ