プハラリ

へえ、赤提灯の下、のれんをくぐったらね、まあ賑やかなこった。
「なんだい今日は、えらく景気がいいじゃねぇか」
そう言うと、大将がにやりと笑うんですよ。
「へっへ、うちじゃ今、“プハラリ”が流行ってましてね。ビール飲んだあとにそう言うと、気分がふわっと上がるんです」

そこで半信半疑で一口、ぐいっとやって――「プハラリ！」
おぉ、胸ん中が軽くなる。なるほど、こりゃ悪くねぇ。
そしたら隣の兄さんも「プハラリ！」、あっち姐さんも「プハラリィ！」。

店内で合唱だ。椅子が揺れる、店も笑う。
そのうち一人、笑いすぎて椅子ごとふわり。
するとみんな次々にふわりと浮かび始めた。

「あっ、こぼした！」大将はタオル持って右往左往。
酔った男がトイレに行って、水を流したら――「プハラリ」ときた。

気づかねぇのも無理はねぇ。
だって今、あの店、ちょいとばかり屋根より高いとこで営業してるんで。