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 親父が他界した。問題はその親父が、成仏していないことだ。あろうことか僕の喉に憑いている。
「普通は空から見守るもんじゃないの?」
「知ったこっちゃねぇ。それよりカラカラなんだ。ビールを注いでくれや」
 なるほど。最後に大好きなビールを飲めなかった事が、心残りだったんだな。
「缶ビールでいいか?」
 僕は缶ビールをグラスに注ぎ、ズルズルっとすすった。
「なんだ、その飲み方は? あつあつのスープかよ」
 ビールは苦手なんだよ。飲むだけありがたく思ってくれ。
「おい、チビチビのむんじゃねぇ。日本酒じゃねぇぞ」
 文句ばっかり言いやがって。飲むのやめるぞ。
「ピチャピチャ……お前は猫か! もういい! 喉仏の顔も三度までだ!」
 その瞬間、喉がすっきりした。なんだ、怒って出て行くのかよ。
「大人げないなぁ」
 僕は笑いながら、最後にグビグビっと一気飲みした。そして空を見上げ、盛大なゲップを出した。
その他
公開:25/11/09 20:00

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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