ナルキッソスエール
2
3
なんて美しいんだ。ナルキッソスは湖面に映る自分を見つめてそう言った。
それからだいぶ時が流れて、湖は観光地になり、売店ができた。クラフトビールの屋台まで出て、「ナルキッソスエール」なるものが名物になった。
「自分に酔える一杯だよ。グビグビっとね」
観光客の青年が、それを受け取る。彼がビールの中を覗き込むと、黄金色に揺らめく自分の顔が、やたらと神々しく見えた。
「なんて美しいんだ」
その呟きが、山々に跳ね返る。
「……美しいんだ」「……美しい」「……しい」
酔いしれる彼の耳には、湖畔のエコーが世界中からの賞賛のように響いた。
グビグビ、ゴクゴク。ぷはぁ。もう空っぽ。
二本目、三本目と飲むと、さすがに酔いが回った。
ふらふらっとした拍子にビールを湖の中に落としてしまう。黄金色は、湖に溶けていく。
湖面に彼の顔が映し出される。
顔を真っ赤にして酔いしれる彼の姿は、まるで天狗のようだった。
それからだいぶ時が流れて、湖は観光地になり、売店ができた。クラフトビールの屋台まで出て、「ナルキッソスエール」なるものが名物になった。
「自分に酔える一杯だよ。グビグビっとね」
観光客の青年が、それを受け取る。彼がビールの中を覗き込むと、黄金色に揺らめく自分の顔が、やたらと神々しく見えた。
「なんて美しいんだ」
その呟きが、山々に跳ね返る。
「……美しいんだ」「……美しい」「……しい」
酔いしれる彼の耳には、湖畔のエコーが世界中からの賞賛のように響いた。
グビグビ、ゴクゴク。ぷはぁ。もう空っぽ。
二本目、三本目と飲むと、さすがに酔いが回った。
ふらふらっとした拍子にビールを湖の中に落としてしまう。黄金色は、湖に溶けていく。
湖面に彼の顔が映し出される。
顔を真っ赤にして酔いしれる彼の姿は、まるで天狗のようだった。
ファンタジー
公開:25/11/09 15:15
更新:25/11/09 22:16
更新:25/11/09 22:16
ログインするとコメントを投稿できます
水絹望音