喉越しソムリエ

5
4

コキュコキュ…

「レディ、こちらを」

愁いの音色を奏でる女性に喉越しソムリエが提供したのは白い星形の苺のおつまみ。夜空色の器でシュシュンと流れ回っている。

「素敵…」
「貴女の心が晴れますように」

女性が流れ星をつまみ黄金色のカクテルを口にすると、シャラリと煌めく喉越し音がした。


閉店後、一人になった店内で喉越しソムリエは頭を掻きむしった。

「ぐあぁぁ!」

本来小洒落たもんは苦手だったが、酒が好きだしなんかモテそうという理由で喉越しソムリエになった。しかし、気障な言葉を言う度心の中の俺は茹で蛸状態。もう限界だった。



バーを辞め、小さな酒場の店主になって30年。

コキュコキュ…

「今日の喉越しならこれだ」

常連の嬢ちゃんに七色鈴豆を出す。幸せそうな喉越し音でビールを飲み、「最高!」と笑う嬢ちゃんに今日もお決まりの言葉を言う。

「俺は天才喉越しソムリエ様だから!」
その他
公開:25/11/09 13:00
喉越しソムリエ?で始まり 喉越しソムリエで終わらせてみた

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容