ビールと暮らした
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ビールの“生き物感”が好きだ。気温や入れ方で泡の立ち方が変わるし、消え方だって、毎回違う。プシュッと開けたらシュワシュワ、ぱちぱち。その騒々しさも愛らしい。
そう思っている人は多かったのか、愛玩飲料として、一緒に暮らせるビールが発売された。感情を学び、冷蔵庫の中から声をかけてくる。〈おかえり〉〈寒くなかった?〉〈今日の泡、きれいでしょ?〉
最初は楽しかった。けれど、このビール、他のお酒を飲もうとすると、あからさまに機嫌が悪くなる。庫内で大暴れし、中をぐちゃぐちゃにされること三回。わたしの我慢も限界に来た。
「ごめんね、今日キミを飲むよ」
すると、意外にも、ビールは微笑んだ。
「ありがとう。実はずっと、飲んでほしかったの」
「え、それじゃあ、ずっと本音を飲み込んで……」
ビールは答えない。泡もすっかり抜けていた。わたしはグイっと飲みほして、ほろ苦さに少し泣いた。やはりビールは、飲み物でした。
そう思っている人は多かったのか、愛玩飲料として、一緒に暮らせるビールが発売された。感情を学び、冷蔵庫の中から声をかけてくる。〈おかえり〉〈寒くなかった?〉〈今日の泡、きれいでしょ?〉
最初は楽しかった。けれど、このビール、他のお酒を飲もうとすると、あからさまに機嫌が悪くなる。庫内で大暴れし、中をぐちゃぐちゃにされること三回。わたしの我慢も限界に来た。
「ごめんね、今日キミを飲むよ」
すると、意外にも、ビールは微笑んだ。
「ありがとう。実はずっと、飲んでほしかったの」
「え、それじゃあ、ずっと本音を飲み込んで……」
ビールは答えない。泡もすっかり抜けていた。わたしはグイっと飲みほして、ほろ苦さに少し泣いた。やはりビールは、飲み物でした。
ファンタジー
公開:25/11/09 11:14
更新:25/11/09 21:21
更新:25/11/09 21:21
ご覧くださってありがとうございます。
学生時代、文芸部に所属して短いお話を書いていました。あれからウン十年、仕事、家事育児に追われて自由な創作から離れていましたが、心のリハビリ(ストレッチ?)のために登録。
//日々の生活が追ってくるため、ログインが不定期になります。
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藍見サトナリ