さよなら、乾杯。
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今日、好きな人とさよならする。
その人はいま、斜向かいの席で嬉しそうに泡を啜っている。
先ほど同僚から受け取った花束を、もう個室の脇に寄せて。
一緒に受け取った色紙を読み耽る様子もない。
ごくごくと動く喉仏に、何度も触れたのに。それは私だけじゃなかった。
好きだよに、好きだよが返ってこなくても幸せだった。
でも、そのせいで幸せじゃない人がいたのも知っている。
私はそれをずっと背負っていかなきゃいけないことも。
あの人はそれを背負わないことも。
ぜんぶぜんぶ、知っている。
ふと目が合う。私から視線を逸らす。
その勢いでグラスに注がれていたビールを飲み干す。
「おっ、いい飲みっぷりだねえ」
隣の課長はもう赤らんでいて、上機嫌にお酌をしてくれる。
私は適当にへこへこしながら、また喉を鳴らす。
情けない。こんな時でも心地いい。
こんな時でも、旨いものは旨い。
それが無性に、悔しかった。
その人はいま、斜向かいの席で嬉しそうに泡を啜っている。
先ほど同僚から受け取った花束を、もう個室の脇に寄せて。
一緒に受け取った色紙を読み耽る様子もない。
ごくごくと動く喉仏に、何度も触れたのに。それは私だけじゃなかった。
好きだよに、好きだよが返ってこなくても幸せだった。
でも、そのせいで幸せじゃない人がいたのも知っている。
私はそれをずっと背負っていかなきゃいけないことも。
あの人はそれを背負わないことも。
ぜんぶぜんぶ、知っている。
ふと目が合う。私から視線を逸らす。
その勢いでグラスに注がれていたビールを飲み干す。
「おっ、いい飲みっぷりだねえ」
隣の課長はもう赤らんでいて、上機嫌にお酌をしてくれる。
私は適当にへこへこしながら、また喉を鳴らす。
情けない。こんな時でも心地いい。
こんな時でも、旨いものは旨い。
それが無性に、悔しかった。
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公開:25/11/09 11:13
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