理想のグラス
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「あなたが落としたのは、この江戸切子のグラスですか?それともこちらの九谷焼のグラスですか?」
まさかこんなに苦戦するとは思っていなかった。軽い気持ちだった。そう、ただ、ビールを注ぐときのトクトクトクという音、そして泡が弾けるシュワーという音が美しいグラスを手に入れたかっただけだ。それだけなのに。昼過ぎにこの泉を訪れてから既に4時間。ああ、夕焼けが綺麗だ。
最初は柔らかい笑顔で金のグラスと銀のグラスを見せた女神も、段々と笑顔がこわばった。しかし、1時間を過ぎた辺りからまた穏やかな笑顔になり、世界中の銘品を見せてくれるようになった。目が笑ってなかったけれど。
ひたすら僕はグラスにビールを注ぐ。トクトクトクトク。うーん、普通だ。泡の弾ける音に耳を傾ける。シュワ、シュワー。やっぱり普通だ。
グラスを泉に投げ込む。女神は出てこなかった。
「仕入れに行ってきます」
水面にメモが浮いていた。
まさかこんなに苦戦するとは思っていなかった。軽い気持ちだった。そう、ただ、ビールを注ぐときのトクトクトクという音、そして泡が弾けるシュワーという音が美しいグラスを手に入れたかっただけだ。それだけなのに。昼過ぎにこの泉を訪れてから既に4時間。ああ、夕焼けが綺麗だ。
最初は柔らかい笑顔で金のグラスと銀のグラスを見せた女神も、段々と笑顔がこわばった。しかし、1時間を過ぎた辺りからまた穏やかな笑顔になり、世界中の銘品を見せてくれるようになった。目が笑ってなかったけれど。
ひたすら僕はグラスにビールを注ぐ。トクトクトクトク。うーん、普通だ。泡の弾ける音に耳を傾ける。シュワ、シュワー。やっぱり普通だ。
グラスを泉に投げ込む。女神は出てこなかった。
「仕入れに行ってきます」
水面にメモが浮いていた。
公開:25/11/07 18:28
クラフトビールコンテスト③
文章を書くのが大好きです。
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