グビ、間
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乾杯の音頭を任された私は、人の本音が「一口目の音」に聞こえる体質だ。
上司のグラスは「グビグビ」。早送りで飲み干そうとする焦燥感が響く。
新人は「ゴク……ゴク」。緊張と期待がまだ喉につっかえている。
そして今夜、隣の彼女の音は「くくっ」。笑いを飲み込んだみたいな、くすぐったい音。今この時間を味わっている本音の独り言。
私はマイク越しに言う。
「今夜は、無理せず、この場を味わう、好きな速さで飲んでください」
彼女は私を見て、小さく「チビチビ」と鳴らした。
その誰にも急かされない小さな一口だけが、炭酸より甘く跳ねた。
上司のグラスは「グビグビ」。早送りで飲み干そうとする焦燥感が響く。
新人は「ゴク……ゴク」。緊張と期待がまだ喉につっかえている。
そして今夜、隣の彼女の音は「くくっ」。笑いを飲み込んだみたいな、くすぐったい音。今この時間を味わっている本音の独り言。
私はマイク越しに言う。
「今夜は、無理せず、この場を味わう、好きな速さで飲んでください」
彼女は私を見て、小さく「チビチビ」と鳴らした。
その誰にも急かされない小さな一口だけが、炭酸より甘く跳ねた。
その他
公開:25/11/07 16:39
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