天の川ドラフト

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「毎日はちょっと……」と彦星から苦情が入った。「適度な距離感というか、新鮮さというか」と織姫が曖昧に重ねる。
こうなってしまった原因は、天の川を僕が一気飲みしたことにある。会えないふたりは不憫だ、なんて酔った正義感で、グビグビと星屑ごと飲み干してしまったのだ。
「あの届かない感じが、ねぇ」「毎日会えると、牛どうだった?とか、肩こりやばいとか、ねぇ」
喉の中で銀河が、シュワシュワと泡立つ。
「元に戻しましょうか?」
「いや、それも困る」とふたり同時に首を振る。
そのとき、琥珀色の星がやってきた。星には取っ手がついていて、まるでビアガーデンにあるビールサーバーだ。
そっと取っ手を倒すと、液体がトクトクと夜空に注がれ、琥珀色の天の川が広がった。
「これくらいでどうでしょう」
「いいですね」
取っ手を戻すと、星はすっと消えた。

それからふたりは毎日天の川をチビチビやって、やがて永遠に結ばれた。
ファンタジー
公開:25/11/07 13:29
更新:25/11/07 14:17

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