Listen The Rainbow beer

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七色に変化するビールがあると聞き、雨空ビアホールを訪れたが、出されたのはごく普通の金ビールだった。
「虹色に光るビールじゃないんですね」
がっかりする俺に、店主の雷様はゴロゴロ笑って、
「飲んでみりゃあ分かるさ。喉越しにはこだわってるんでね」
レドレド、と疑い半分に一口。いかにも雷らしい、稲妻級の刺激が舌と喉を直撃した。
「……オレ?」
雷で麻痺したのか、俺んじの喉が妙な音で鳴ったような?
イエイエ気のせいだろー。雷光が弾ける泡をグリングリン流し込む。喉ぼとけがブルブル震え、食道がインイン、ディゴディゴと不可思議な喉越しを奏でる。
「色は色でも、うちは音色を味わう店なんだ。七色の喉越しは楽しんでもらえたかね?」
太鼓腹を揺らして笑った雷様が、手にしたばちでしびれっぱなしの俺の喉を軽く叩く。

パプール!
感嘆の吐息がラスト一色を飾る。万雷の拍手のごとき雨音と、黄金の雫が地上へ降り注いだ。
ファンタジー
公開:25/11/07 12:02
クラフトビールコンテスト③

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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