幸運、ごくり。
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旅先でふらっと入ったクラフトビールバー。
壁の本棚にあった小説を片手に、カウンターに座る。メニューをひらいて〈幸運エール・極〉を頼んだ。
本を開くと、古紙の甘い香り。前の持ち主が忘れたのか、四つ葉のクローバーのしおりが挟まれていた。
「どうぞ。幸運エール・極です」
マスターがグラスを置いた。
ごくごくと飲む。草花の香りが広がり、一日歩き回った身体を爽やかな風が包む。
もう一口、ごくり。止まらない。
ふと小説の一節に目が留まった。
“幸運は、気づかぬうちに喉元を通り過ぎていく”。
思わず笑って、もう一口。グラスはほとんど空になっていた。
顔を上げると、マスターが微笑んだ。
「飲みきると幸運が来ますよ」
グラスの底に、四つ葉の形の光が揺れていた。
最後の一滴をごくりと飲み干した瞬間、ドアベルが鳴った。
物語の余韻とビールの香りが混ざる中、私はゆっくりと振り返った。
壁の本棚にあった小説を片手に、カウンターに座る。メニューをひらいて〈幸運エール・極〉を頼んだ。
本を開くと、古紙の甘い香り。前の持ち主が忘れたのか、四つ葉のクローバーのしおりが挟まれていた。
「どうぞ。幸運エール・極です」
マスターがグラスを置いた。
ごくごくと飲む。草花の香りが広がり、一日歩き回った身体を爽やかな風が包む。
もう一口、ごくり。止まらない。
ふと小説の一節に目が留まった。
“幸運は、気づかぬうちに喉元を通り過ぎていく”。
思わず笑って、もう一口。グラスはほとんど空になっていた。
顔を上げると、マスターが微笑んだ。
「飲みきると幸運が来ますよ」
グラスの底に、四つ葉の形の光が揺れていた。
最後の一滴をごくりと飲み干した瞬間、ドアベルが鳴った。
物語の余韻とビールの香りが混ざる中、私はゆっくりと振り返った。
ファンタジー
公開:25/11/06 21:26
クラフトビールコンテスト③
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