しゅわしゅわんわん

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「犬を探しています。名前:しゅわしゅわんわん」という貼り紙を見た。金色の毛並みをした犬の写真。「ビールの泡の音と味が大好物です」いやいや、犬にビールは禁忌だろう。
そう思いながら缶ビールのプルタブをぷしゅっと開けると、「ワン」隣に犬がいた。「うわっ」驚いて見ると、写真の迷い犬だった。開けたてのビールはしゅわしゅわと新鮮な音を立てている。
「お前、本当にこのしゅわしゅわが好きなのか」語りかけると、「ワン」と鳴いて、缶からあふれた泡をぺろりと舐めた。「あ、こら!」こちらの焦る気も知らないで、犬は尻尾を振っている。
「しゅわしゅわんわん!」声がして、女性が駆けてきた。犬が嬉しそうに跳ねる。「この子、特殊体質で。本当にビールのしゅわしゅわが大好きなんです」おそるおそる缶を差し出してみると、犬はまたしゅわしゅわをぺろり。「三人で飲みますか」飼い主が笑う。飲み友達が、二人――いや、一人と一匹できた。
ファンタジー
公開:25/11/06 21:16
クラフトビールコンテスト③

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