4
5
物語の主人公になりたかった。
小学生の時、宮澤賢治の『雨ニモマケズ』を読んだ。私もそうなりたいと思った。
それから私は贅沢をせず、誰かのために時間を使った。
友達から連絡があれば、雨の日でも飛んで行き。
近所のお祭りで人手が足りないと聞けば、一緒に盛り上げ。
会社員になってからは、各部署を渡り歩き潤滑油となった。
しかし、ある一言で私の夢は終わった。
「ありがとう」
ああ。私はいつの間にか見返りを求めていたんだと気づかされた。不思議と悲しくはなかった。
その日、私はビールを片手に帰宅した。初めての贅沢だった。
トクトクと注がれる小麦色の液体は、まるで宝石のように見えた。
シュワシュワと溢れた泡は、夢のように弾けて消えた。
揺蕩うような心地よさが全身を駆け巡った。
物語の主人公にはなれなかった。
けれど、このひとときを味わえる人に、私はなりたい。
小学生の時、宮澤賢治の『雨ニモマケズ』を読んだ。私もそうなりたいと思った。
それから私は贅沢をせず、誰かのために時間を使った。
友達から連絡があれば、雨の日でも飛んで行き。
近所のお祭りで人手が足りないと聞けば、一緒に盛り上げ。
会社員になってからは、各部署を渡り歩き潤滑油となった。
しかし、ある一言で私の夢は終わった。
「ありがとう」
ああ。私はいつの間にか見返りを求めていたんだと気づかされた。不思議と悲しくはなかった。
その日、私はビールを片手に帰宅した。初めての贅沢だった。
トクトクと注がれる小麦色の液体は、まるで宝石のように見えた。
シュワシュワと溢れた泡は、夢のように弾けて消えた。
揺蕩うような心地よさが全身を駆け巡った。
物語の主人公にはなれなかった。
けれど、このひとときを味わえる人に、私はなりたい。
その他
公開:25/11/08 14:04
のんびり書いていきます。よろしくお願いします。日常を書くのが好きです。でも、ファンタジーも好きです。思いついたものならなんでも好きなのかもしれません。
ログインするとコメントを投稿できます
猫目ちゅん