変酒

8
8

目が覚めたら巨大な缶ビールになっていた。
金曜の夜に深酒が過ぎたせいか。ベッドの中でタブを伸ばし、ぷしゅ…と炭酸を吐きかけて気付く。気が抜けたらまずくなる、もったいない。
どうやらロング缶だ。文字通り手も足も出ない中、冷やさねばならないと思い至る。寝返りを打ってベッドを脱出、シュワッと悲鳴が上がったが、破損は免れた。

転がりながらキッチンに到着し、そそり立つ扉を前に途方に暮れる。
缶の構造で冷蔵庫は開けられない。ロング缶の液量をもってしても無理だ。せめて元の体なら――

突然伸びてきた腕に掴まれ、缶内のビールが揺れた。
暴れる間もなくタブをこじ開けられブシューッ!と絶叫。転がって来たのだから当然だ。じゅわわと噴き出す泡を飲まれる。
『ぐびっ!ぐびっ!ゴッゴッゴ、ゴクン』

……げっぷ。


目が覚めたら小瓶のビールになっていた。
元に戻れたらしい。冷蔵庫の中で王冠を振り、二度寝に入った。
ファンタジー
公開:25/11/04 12:20
クラフトビールコンテスト③

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容