ノービール　ノーライフ

一度はつぶれた小さな醸造所。僕は、再建のために派遣された、ビール好きのサラリーマン。シュワシュワと発酵音が響き、ビールが生まれる場所にいる嬉しさ。きめ細やかな泡がグラスから溢れる。仕事として、ゴクゴク飲める幸せ。会社の将来はわからないが、僕の現在はあかるい。
再建仲間と共に試行錯誤を重ね、何度も失敗しながらつくる新商品。グビグビと飲む業務が評価される仕事。まさに天職。クラクラになるまで残業だ。休日出勤だ。
ワークバランスより仲間と一緒に励む仕事。ビールが人々を繋げる力を持っていることを実感する。仲間と共に、夢が現実となる瞬間を、いつまでも忘れないだろう。
だが、このビールでは、僕の私生活の課題を一つも解決してはくれない。体重あるいは独身生活も、無濾過ビールのように、不純物が何ひとつ濾過されずに濃密なまま残っている。そう、私生活では夢が夢のまま終わることが頭から離れないだろう。