雲の上できみと

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 気がつけば一面の、真っ白な雲。
「あたし、雲の上を歩くのって夢だったの」
 きみが笑う。隣で笑う。
「じゃあきっとこれは夢だ」
 あたしは右足を伸ばして雲に触れた。なんの抵抗もなく、爪先は白くかすんだ。びびって引っ込めたらきみはまた笑った。隣で笑ってあたしの手をとった。
「一緒に歩こう」
 いっせいのせで、踏み出した。あたしの右足ときみの左足、くるぶしまで埋まった。足の裏でしゅわっと音がした。思わず目を見合わせて、つないだ手をしっかり握りなおして、もう一歩。
 しゅわん。
 しゅわわん。
 しゅわわわん。膝まで埋まった。
 しゅわわわわわん。頭のてっぺんまで沈んで視界は真っ白。そこに差し込む黄金色の光。
「ねえ起きて」
 肩を揺すぶられて目を開ければ、真顔のきみ。
「帰るよ」
 立ち上がると、なんだか足の裏がしゅわしゅわする。きみはグラスに残った黄金色を飲み干して、あたしの手をとった。
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公開:25/11/03 20:16
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