2
4
古びた家を解体する前の朝、不要ゴミの日に、庭先に鏡台やタンスがずらりと並んだ。どれも祖母の代から使われていた家具で、木の匂いと共に長い年月の記憶を湛えていた。搬出を手伝っていると、鏡台の鏡にふと何かが映った。
若い女が微笑んでいる。見覚えのない顔だけど、何故かどこか懐かしい。目を凝らしじーと見ると、それは祖母の若かりし頃の姿だと気付いた。私は驚いて振り向くも、そこには誰もいない。
再び鏡を見ると、女が静かに口を動かした。ありがとう。
その瞬間、一陣の風が吹き、鏡台の引き出しがひとりでに開いた。中には古い手紙や写真が入っていた。
祖母が戦地へ旅立った祖父に宛てた未投函の便箋だった。
私はそれらを大事に取り出し胸に抱え、もう一度鏡を見たが映っていたのは、今の私の顔だけだった。
でもその瞳の奥に、確かに祖母の優しい微笑が宿っている様に感じた。
若い女が微笑んでいる。見覚えのない顔だけど、何故かどこか懐かしい。目を凝らしじーと見ると、それは祖母の若かりし頃の姿だと気付いた。私は驚いて振り向くも、そこには誰もいない。
再び鏡を見ると、女が静かに口を動かした。ありがとう。
その瞬間、一陣の風が吹き、鏡台の引き出しがひとりでに開いた。中には古い手紙や写真が入っていた。
祖母が戦地へ旅立った祖父に宛てた未投函の便箋だった。
私はそれらを大事に取り出し胸に抱え、もう一度鏡を見たが映っていたのは、今の私の顔だけだった。
でもその瞳の奥に、確かに祖母の優しい微笑が宿っている様に感じた。
ミステリー・推理
公開:25/11/05 11:28
ログインするとコメントを投稿できます
gonsuke