狸ビール

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狸のたぬきちは、夜のマンションにこっそり忍び込んだ。
冷蔵庫を物色していると、玄関からガチャリと音が聞こえた。
慌てて缶ビールに化けて冷蔵庫に逃げ込む。

酔って帰宅した男が冷蔵庫を開け、たぬきちの化けた缶ビールに手を伸ばす。
飲まれてしまったら大変だ!
プルタブが起こされた瞬間、たぬきちは「プシュ!」と叫んだ。
男が飲み始めると、たぬきちは「ゴクゴクゴク」と声を出す。
二口目には「グビグビグビ」と音を変えてみた。
「・・・あれ?なんか飲んでる気がしないな」
男が缶ビールをテーブルに置くと、たぬきちは「プハァ!」と喉を鳴らした。
男は缶ビールを凝視し、
「・・・今ここから聞こえたような。・・・心霊現象?」
と呟くと、青ざめた表情でベットへ逃げ込んだ。

たぬきちは狸の姿に戻ると、マンションの窓から地面に飛び降りた。
カラカラカラと空き缶が転がる音が、夜の街に響いた。
ファンタジー
公開:25/11/05 10:00
更新:25/11/05 10:10

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