港のネオンとグビグビ

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三津浜の古い倉庫をリノベした醸造所。金曜の夜、カウンターに並ぶ瓶のひとつに、手書きで「GUBI GUBI」とだけある。マスターいわく「音まで冷やしてあるやつ」。一口のどを通すたび、きらきらした「グビグビ」がグラスの内側に貼りついて、ネオンみたいにまたたく。隣の彼女が指でそれをなぞると、指先までシトラスが香って、もう一杯、港町の夜がふえる。最後の一滴を飲んだとき、ラベルの文字だけふっと消えて、残ったのは「いい夜だったね」という気配だけ。
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公開:25/11/01 09:07

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