エール

1
2

朝起きたら昨夜未返信のメッセージが目に入った。
<エール明日は遅刻すんなよ>
俺は二度見した。俺のあだ名は『ビール』のはずだ。送信者は『エーコン』。おかしい。『ベーコン』じゃない。友達一覧を見ると『AAQ』、『エジョレーヌーボー』、『エンレスハム』……B組全員の登録名が変わっていた。
お前らは永久にB級だ。
昨日の先生の言葉。卒業式前日に酷いダジャレ言うなよと思ったが、まさか、みんな一晩でAに成長したとでもいうのか。それとも、抗議のための改名か。とにかく学校に行かなきゃ……。頭の泡がすーっと引いていく。誰かが俺を呼ぶ声がする——

「おいB、起きろ。ったく、今から卒業式だぞ」
目を開けると先生が目の前にいた。
「いいか、お前たちはAになる必要はない。ありのままのBのお前たちが先生の誇りなんだからな。みんな、卒業おめでとう」
先生は潤んだ目を隠すように、慌ててBっきらぼうにBっ頂面をした。
青春
公開:25/11/01 08:00
ラベル小説

雪宮冬馬( 広島 )

Yahoo!でのログインがどうもできないので新たに作りました。
20代男。趣味でショートショートを書いてます。
夢は「坊っちゃん文学賞」受賞!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容