一番大切なもの

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雪山で遭難者の捜索にあたっていた。
どこまでも広がる白い雪原、
全てを吸い込むような静寂・・・
その時だった。
パカッ! グビグビグビ、プハァー!
はるか遠くで音が聞こえ、捜索隊は顔を見合わせた。
音の方へ駆け寄ると、雪に埋もれたテントを発見。
雪を掻き分け、テントを開けると、中には凍えて震える男がいた。
「助かった。よく見つけてくれた」
「いや、ここら辺から、おかしな音が聞こえたんだ」

男は熱いコーヒーを飲みながら、
救助が来るまでに体験した、不思議な話をしてくれた。
「雪女に会ったんだ・・・
ここで凍え死ぬか、お前の一番大切なものを差し出せって・・・。
死にたくないから、台所に置いた・・・」

その時、遠くで、またパカッ! グビグビグビ、プハァー!という音が響いた。
白い着物の女、雪女が赤ら顔で缶ビールをあおっていた。
「まぁ、わかるよ。これがあれば人生楽しいからね」
ファンタジー
公開:25/11/05 10:00
更新:25/11/05 10:11

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