天然物のビールの結晶

「これ、金じゃなくて天然物のビールの結晶ですね。水に溶かすとビールになりますよ」
鑑定結果に肩を落とす。金だと思っていたのにとんだ空振りだ。
ため息を吐き、店を出る。ここの鑑定人は金や宝石は鑑定出来てもビールの結晶の鑑定はできないんだとよ。まあ、出来たところで大した額にはならんだろう。
だから俺は結晶を水の張ったジョッキに落とす。まるで入浴剤のようにシュワシュワと音を立て、液体を黄金色へと染めていく結晶。
ものの数分でビールになった。かき混ぜると泡立ちだって最高だ。
飲んでみるとギュっ！ギュっ！ギュっ！喉がビールを掴んで離さない。五臓六腑が歓喜する。
そんな風に感動を味わっていると先ほどの鑑定人から電話がかかってきた。
「天然物のビールの結晶ですが、今の相場は金の百倍だそうです」
その言葉に血の気が引く。腹の中からシュワシュワと音がする。
俺は大金を、水の泡ならぬビールの泡にしてしまった…