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仕事帰りの夕暮れ、見上げた山並みが泡化粧していた。
初冠泡か。どうりで今日は冷えるはずだ。黄昏に沈む稜線の頂きの、こんもりと注がれた白泡に思わず喉が鳴る。
この辺りの山は冬将軍のジョッキなのだ。毎年冬の訪れとともに、凱旋の景気付けに一泡引っ掛けていく。運良く行進にかち合えば、こうして祝杯のおこぼれにあずかれる。
――しゅわり。かすかな音が弾け、ほろ苦い香りが鼻をくすぐった。
――しゅわ。――しょわわ。――しゃわ。北風に乗って、凍った泡のささやきが降ってくる。少々しみるので目をつむり、子供の様に空へ向かって口を開け、季節の恵みを存分にほおばる。
今年の冬も厳しそうだ。寒さは苦手なのに不思議とワクワクするのは、童心に返ったからか、大人ならではの楽しみを知ったせいか。
――ほわん。火照った吐息を風泡に吹いて乾杯する。
耳を澄ませば、グビグビと山を呷る冬将軍の、豪快な喉越しが聞こえる気がした。
初冠泡か。どうりで今日は冷えるはずだ。黄昏に沈む稜線の頂きの、こんもりと注がれた白泡に思わず喉が鳴る。
この辺りの山は冬将軍のジョッキなのだ。毎年冬の訪れとともに、凱旋の景気付けに一泡引っ掛けていく。運良く行進にかち合えば、こうして祝杯のおこぼれにあずかれる。
――しゅわり。かすかな音が弾け、ほろ苦い香りが鼻をくすぐった。
――しゅわ。――しょわわ。――しゃわ。北風に乗って、凍った泡のささやきが降ってくる。少々しみるので目をつむり、子供の様に空へ向かって口を開け、季節の恵みを存分にほおばる。
今年の冬も厳しそうだ。寒さは苦手なのに不思議とワクワクするのは、童心に返ったからか、大人ならではの楽しみを知ったせいか。
――ほわん。火照った吐息を風泡に吹いて乾杯する。
耳を澄ませば、グビグビと山を呷る冬将軍の、豪快な喉越しが聞こえる気がした。
ファンタジー
公開:25/10/29 21:24
クラフトビールコンテスト③
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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創樹